思いは時空をこえて 10
年頭所感ーこころの好景気
昨年末に肺癌の患者さんが、 「五木寛之が今『うつ』の時代と書いていますね。先生はどう思われますか?」と、質問されました。私は、 「『うつ』と『抑うつ』は違います。五木さんは『うつ』と『抑うつ』の違いを理解していないと思います。『うつ』 はエネルギーもなく、感情も鈍麻し、病気ですが、『抑うつ』には、エネルギーも感情もあります。試験で悪い点を とった後や、失恋の時、会社が上手くいかないときに沸き起こる感情は『うつ』ではなく、『抑うつ』です。この差 をしっかり認識しないと、何でも『うつ』を考えてしまいます。『うつ』には、薬物を使って治療も必要ですが、『抑 うつ』に安易に薬物を使うと薬物の副作用から『うつ』になることがあります。」
「『うつ』の反対は『躁』ですが、じゃ『抑うつ』の反対はなんですか」 と、質問されました。私は、考えを巡らし 「『抑うつ』の反対は『至福』だと思います」と、答えました。人に何か奉仕をして、感謝される時に感じる感覚こ そが、人を『抑うつ』から、解放してくれると思います。
『抑うつ』の時にそんな気持ちになれるかと、思いがちですが、危機という字が「危険な時の機会」という意味であ
るように、周りの状況から『抑うつ』になっている時こそ、自分の内なる心に火をつける必要があり、それは、人か
ら必要とされているという『至福』感と、思います。
100年に一度と言われている不景気ですが、『こころ』には不景気はありません。こころの『景気』を作るのは、 自分自身です。 『こころの好景気』を皆で作りましょう。